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  • 第44回 明治神宮大会(高校) 日本文理高校 vs 沖縄尚学高校
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明治神宮大会(高校)

2013-11-20

決勝

日本文理高校vs沖縄尚学高校8 - 9

 

明治神宮大会が続く限り語り継がれる試合だと思う。それ程、凄まじい逆転劇の試合だった。
両チームとも打線が強力で振りが鋭く、準決勝を共にコールドで勝ち上がってきていたので、ある程度点の取り合いになるかもしれないと思っていたが、予想以上の打撃戦となった。

優勝した沖縄尚学だったが、序盤は完全に日本文理のペースだった。

初回、前の試合で死球を受けてスターティングメンバーから外れた竹石に代わって1番に入った星が、初球を叩くと打球がライトへ上がった。当たりはライトフライに見えたが、その打球がゆっくりそのままライトスタンドへ吸い込まれて行く。初球先頭打者ホームランでいきなり先制。

その後、2者連続の三振に打ち取るも、続く4番池田、5番小林に連続安打を許し、その後6番鎌倉を死球で歩かすなど、結果的に0点で抑えるも日本文理が初回からペースを握っていった。

日本文理ペースはその後も続いたが、象徴していたのは3回表の日本文理の攻撃。
簡単に2死を取るが、6番鎌倉がレフトへホームランを放つ。沖縄尚学にしてみれば、三者凡退で攻撃に繋げたいところだったが、日本文理がなかなか三者凡退にならないどころか、2死から得点を奪うという相手にとってダメージが大きい点の取り方をしていく。

一方、沖縄尚学は歯車が噛み合わない。4回裏にノーアウトランナー1、3塁というチャンスを作るも、恐らくサインミスがからみスクイズが失敗。自らチャンンスをつぶすような流れでペースを握れなかった。

その後も、飯塚の2打席連続のホームランなどで着実に日本文理が点差を広げていき、6回終了時点で5本のホームランが飛び出し8−0。日本文理がこのまま大差で勝つことに疑いがないような試合展開だった。

そんな一方的な試合の中、流れが大きく変わってしまったプレーがあった。
7回に山城(大)の3ランでようやく3点を返し、5点差で迎えた8回表の沖縄尚学の攻撃だ。

ようやく少しペースを掴みかけ8回も1点を返し、なおノーアウトランナー1塁で迎えた4番安里の打球はファーストファールフライ。ところがファーストの小太刀が落球してしまったのだ。これがこの試合のポイントだったように思う。

さらに驚くことに、生き返った安里は次の球をフルスイングすると、打球がレフトスタンドへ突き刺さり2ランで2点差になった。

恐らく日本文理の選手達にとって大きかったのは、2点差になったとうことより、球場全体が「まさか、逆転がありえるかもしれない」というような雰囲気になってしまったことだったと思う。実際、ツーアウトからの何でもないピッチャーゴロを飯塚が慌ててしまい打球の処理をミスして追加点を許し、その後の逆転へつながってしまった。

日本文理は勝つチャンスをエラーで潰してしまったのだが、沖縄尚学の執念も本当に心を打つものがあった。

4番安里が凡退のはずだった打席で、相手のエラーでもう一度チャンスをもらい、そのチャンスをものにしたこと、2点差ワンアウトランナー1塁からの山城(大)のレフト前ヒットで、1塁ランナーが勇気を持って3塁へ好走塁したこと、そして逆転打を放った久保の詰まりながらのタイムリーヒット。これらは沖縄尚学の執念だと思う。

試合終了とともに、球場全体から惜しみない拍手が両チームに送られたが、私も心からありがとうという気持ちに自然となった。

こうして沖縄尚学が優勝したが、両チーム合わせて7本のホームランは大会記録となった。さらに、この試合で2本のホームランを放った飯塚選手は今大会3本目となり、こちらも個人の大会記録となった。

この両チーム、来年春の甲子園出場はほぼ確実なので、また一段と成長した姿を見るのが今から楽しみだ。

試合詳細はこちら