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第44回 明治神宮野球大会(大学)

2013-11-19

準決勝

亜細亜大学vs桐蔭横浜大学5 - 1

 

今大会2度目の延長タイブレーク。点数だけ見ると大差に見えるが、試合は本当に力が拮抗した素晴らしい試合となった。

この試合の亜細亜大学の先発は、広島からドラフト2位指名を受けた九里。九里は2日前の試合でも先発し中1日の登板にも関わらず、6回1/3を1失点と試合をしっかり作り、先発としての役割を十分に果たした。

一方、桐蔭横浜大学の先発小野も負けていない。前日の試合で4回からの6イニングのロングリリーフをしたにも関わらず、九里を上回る6つの三振を奪い試合をつくった。

後を託された亜細亜大学の山﨑も、桐蔭横浜大学の上田もしっかりとバトンを受け継ぎ相手打線を抑えたこと考えると、両チームに力の差はほとんどないと言っていい。それだけに試合を通して緊迫した状態が続いた。

この試合のポイントとして、1回表の亜細亜大学の攻撃、ツーアウトランナー3塁からの4番中村のセカンドフライの場面を挙げたい。

このプレー自体は何でもないものだったが、実は桐蔭横浜大学にとっては深い意味があるプレーだった。

中村のフライをキャッチしたのは、セカンドの山中なのだが、実は山中、前日の試合で3つのエラーを記録していた。といっても、どれも不運で気の毒なプレーにも感じてしまうようなものだった。しかも、前日の試合ではショートを守っていたのだ。

前日のエラーを全て紹介する。1つ目は1回先頭打者のレフトとショートの間のフライに対し、背走しほぼ捕球体勢に入っていたものの、最後の最後で足を取られボールをグラブに当てて落球してしまったのだ。

2つ目は、同じく1回ツーアウト満塁からの6番打者の強烈なライナーに対し、必死で体で止めに行ったのだが、正面に入りきれずわずかに体の横に当ててしまいボールがセンタ—方向へ転がり、先制の2点が入ってしまったプレーだ。一瞬ヒットだと思ったが、スコアボードにはエラーを示す「E」の文字が表示された。このプレーは、今年の日本シリーズ第7戦、マギーの強烈な打球を巨人の坂本が弾き、坂本のエラーで楽天が先制をした場面を見ているようだった。

3つ目は、5回先頭打者の三遊間への打球に対し、追いつくもグラブに納めきることができず弾いてしまい、エラーと記録されたプレーだ。この打球は追いつかなければ完全にヒットになっていた当たりだっただけに、非常に不運なプレーだった。

話しを戻すが、中村の打球は前日の試合の1つ目のエラーと状況が非常に似ていたのだ。ショートとセカンドの違いこそあれ、内野手が背走して捕球するような打球だった。

恐らく守っている山中だけでなく、桐蔭横浜大学のベンチや応援スタンド全員が前日のプレーがフラッシュバックしたに違いなかった。そして祈るような気持ちだったと思う。そのような状況だったのだ。山中はこの試合ではしっかり捕球しピンチを切り抜けたのだが、桐蔭横浜大学にとっては非常に大きいプレーだったのではないかと思う。

また、前日の試合でショートを守っていた山中がセカンドに回ったことについては、チームの雰囲気を悪くするようなエラーではなかったにしろ、3つのエラーを記録した山中に対し、セカンドに回ることで少しでも気分転換になればという意味を持たせてたのではないかと思う。こうした見えないストーリーがあったのだ。ただ、その山中のところにボールが飛んで行ったのだからそれもまた面白い。

こうして何とか初回を0点に抑えたのだが、桐蔭横浜大学にとっては山中のこのプレーがあったからこそ、延長までもつれ込む試合を作れたのではないかと思えてならない。だからこそ、普通なら何でもないプレーだったが、この試合のポイントとしてどうしても紹介したかったのだ。

1試合だけだと見えないものが、大会を通して見ることで、見えてくるものがあるということを感じた試合だった。

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